フィラリア症(犬糸状虫症)

<症状>
犬・猫の心臓の右心房室と肺動脈に寄生するフィラリアにより血流が阻害されたり、心内膜炎を起こし、運動不耐性・呼吸困難・胸水・腹水・血色素尿などの鬱(ゥッ)血性心不全症状を表します。また、成虫が肝臓・脳・眼などに迷入すると様々な症状を表します。特に猫のフィラリア症は検査でも発見しづらく、少数寄生でも重い症状を表し死亡後解剖検査で感染を発見される事もあります。  

<原因>
蚊が吸血するときに蚊から犬の体に移動するフィラリアの幼虫(第三期幼虫)は犬の体の中を成長しながら体内移動し、成虫なる頃心臓にたどり着き子虫(ミクロフィラリア)を産みます。このフィラリア虫は長さが15〜20cmもあり、これによる物理的刺激・栓塞により発症します。  

<治療>
毎年飲み始めに血液検査を行い感染の有無を調べます。未感染の場合は月一回の予防薬を5月〜12月まで飲ませます。運悪く感染している場合は状態により、年間を通して予防薬を飲み続けて成虫の寿命を待ちながら予防する方法と、一度心臓に寄生しているフィラリア成虫を駆虫してから月一回の予防薬投与する方法に分かれます。しかしながら、心臓に寄生している成虫を駆虫すると死んだ成虫が一度に流れて出て血管閉塞したり三尖弁閉鎖不全を起こして急性症(ベナケバ・シンドローム)に移行しやすいのでお勧めしません。
予防に勝る治療はありません。  


 慢性関節リュウマチ(RA)

<症状>
 慢性関節リュウマチは人間だけの病気ではなく、犬および猫にも起こります。その病態は主に四肢における不可逆性の関節破壊を伴う関節炎です。手足を痛がるとか手足を上げているなどの禀告により、レントゲン検査・血液検査などにより発見される事がほとんどです。また、健康診断の時に発見されることもあります。 症状が進むと関節が破壊され歩行困難となり、さらに脊椎関節に起こると予後不良です。
 比較的初期の症状としては、朝は調子悪いが昼頃には何とか動き出すという"朝のこわばり"は最も良くある症状です。

<治療>
 つい最近までは効果的な治療法はありませんでした。ここ数年の研究により以前なら進行を止めることもかなり難しかった病気ですが、今では寛解にまで持って行ける症例が増えてきています。その新しい治療方法はテーラーメイド療法です。このテーラーメイド療法を行うことで、通常は病状が進行して歩行困難になる症例でも通常の生活を送り一生を過ごせるようになってきました。

 当院ではさらに早い段階で「早期リュウマチ診断」を行い、関節が破壊される前の段階から診断・治療することにより愛犬・愛猫を痛々しい慢性関節リュウマチから守ります。

 他院で慢性関節リュウマチあるいは慢性関節炎と診断されたが、治療がうまくいかないと感じられている方は一度診察を受けにご来院下さい。(電話でのご相談はご遠慮下さい)

僧帽弁閉鎖不全症(MR)

<症状>
 僧帽弁がうまく閉まらず(逸脱も含む)に左室収縮期血液が左室から左房に逆流します。これにより左室不全の色々な症状が出てきます。 最初は飼い主さんも気がつかないが弁に障害が出ているT期から始まり、運動時の息切れ(U期)で初めて症状として発現し、症状が進んでくると安静時にも呼吸困難(V期)を起こすようになり、更に進むと心臓喘息に伴う発作性呼吸困難(W期)に進行します。 通常、お散歩の途中で歩かなくなってきた、咳をするようになった、また発作を起こして倒れたという禀告で来院されることが多いです。

<治療>
 出来るだけ症状が出ていないか軽い状態(T〜U期)から治療する事が大切です。症状が進むにつれ治療に対する反応が悪くなっていきます。 強心剤、血管拡張剤、利尿剤、心臓疾患用処方食、場合によっては運動制限をして弱った心臓をサポートします。

アレルギー性皮膚炎(アトピー性皮膚炎)

<症状>
 アレルギー性皮膚炎とは、免疫グロブリンE(IgE:皮膚感作抗体)が産生され、これを媒介として皮膚に発生した過敏反応で別名アトピー性皮膚炎とも言われます。その特徴は痒み、再三にわたる定型症状の再発、慢性の経過、季節性のものでは一定の季節での再発などです。
掻痒が主症状で、激しく咬み、引っ掻きます。皮膚が赤く腫脹し、ふけ、脱毛が起こります。一般に眼周囲、口周囲、耳介部、指間、腋窩、内股、会陰部に好発します。再発を繰り返していくうちに、別の新しい抗原(アレルゲン)が加わり広範囲となります。

<治療>
 原因の除去と止痒・抗炎症・抗生剤・軟膏の塗布を行い補助療法としてシャンプーも有効です。通常、食餌性アレルギーも関与しているため処方食を給餌します。
最近ではヘルパーT細胞であるTh1Th2検査および投薬で病気をコントロール出来るようになってきました。Th1Th2検査についてはお尋ね下さい。

猫泌尿器症候群(FUS)

<症状>
 排尿障害と血尿を特徴とする猫の泌尿器疾患で、特に雄猫では、粘液とリン酸アンモンマグネシウム結晶(ストラバイト結晶)により尿道閉塞を起こすことがあります。閉塞が持続した場合、尿毒症のため致死的となることがあります。
 原因は不明ですが、ウイルス感染、アルカリ尿、乾燥キャットフードなどが二次的病因として考えられます。また、室内のみでの飼育と肥満は、FUSの誘因になると考えられています。また、FUSの発症は、冬の終わりころから春にかけて多く、水分摂取量と関係していると思われます。

<治療>
 尿道閉塞を伴う場合は早急な処置が必要です。超音波スケラーなどにより結石を粉砕し排尿させます。通常、尿道にカテーテルを設置し膀胱内の結石を洗浄し排泄させ、静脈点滴により尿量を増加させて結石の析出を抑えます。また、二次感染防止のために抗生物質、尿量を増加させるために利尿剤なども投与します。痛みと興奮で処置が困難な場合、鎮静剤を注射して行うこともあります。腎不全陥った場合にはさらに早急かつ適切な処置が必要です。

猫伝染性腹膜炎(FIP)

<症状>
 家猫や野生のネコ科動物に見られる慢性で進行性のウィルス性疾患です。 すべての年齢の猫に感染し品種や性別による差はありません。間接蛍光抗体法の開発により、実際には不顕性感染が多く、死亡するのはFIP感染猫の15頭に1頭(約7%)であることがわかってきました。しかし、いったん臨床症状が現れた場合は予後不良となる場合が多いです。
 伝染性腹膜炎という名称は、現在でも広く使われていますが、その病変は必ずしも腹膜面に限らず、種々の臓器、例えば肝臓、腎臓、肺、眼および中枢神経系など、広範な臓器に及ぶことから現在では、猫コロナウィルス病という名称がふさわしいとされています。
 一般的な臨床症状は、食欲不振、体重減少、沈うつ、脱水、全身衰弱、発熱、可視粘膜蒼白、嘔吐、下痢などの色々な症状を呈します。症状により滲出型と非滲出型に分類されます。

<治療>
 補液、輸血(貧血時)、抗性物質、消炎剤などの対症療法を行います。また、抗ウィルス作用のあるインターフェロンによる治療で、良い結果が出ることがあります。

食糞症

<症状>
 動物が自分のまたは他の動物の糞便を摂食することを言います。食糞は犬では一般的であり病気ではありませんが、医学的な原因として膵外分泌不全・副腎皮質機能亢進症・腸の吸収不全・消化管内寄生虫症などの病気により起きることもあります。行動的な原因としては動物が自分で清掃・不適切な排泄の罰の回避・生活習慣や環境の急激な変化などがあります。  

<治療>
 食糞が行動学上の問題か医学上の問題かによって異なります。行動学上の問題から来るものであればその原因を取り除き、補助療法として食亊の時に食糞症防止のサプリメントを飲ませます。この食糞症防止サプリメントの詳しい使用方法などは当院で販売しておりますのでお尋ね下さい。  

犬ジステンパー

<症状>
急性熱性のウィルス性疾患で、伝染性が強く死亡率も高いです。経口感染し3-7の潜伏期間の後発症します。細菌による二次感染により症状が悪化します。主な感染源は感染犬の鼻汁、目やに、尿などです。 症状は、初期には40度前後の発熱(感染期)の後、消化器・呼吸器粘膜カタル、脳神経症状が出ます。(二次感染期)  

<治療>
免疫血清、インターフェロン、抗生剤などで治療し、神経症状が発現した場合は抗癲癇剤を使用します。 その他に症状がある場合は、症状に応じて補液などの対症療法を行います。  

<予防>
母親の初乳に含まれる移行免疫は生後2ヶ月〜4ヶ月前後(平均生後3ヶ月:12週齢)で消えてしまいます。ですからそれ以前にワクチン摂取しても効果がありません。どの辺で移行免疫が切れるのかが判らないので、通常は生後8週齢、12週齢、16週齢でワクチン接種を行います。その後は年1回の追加接種が推奨されています。

犬の分離不安症

<症状>
犬が飼い主から引き離されて、過度の図案やストレスによって過剰な吠え、不適切な排泄及び破壊活動が 引き起こされる場合、これを犬の分離不安症と呼びます。この病気で苦しむ犬は全頭数の約10%にのぼると推定されます。  

<原因>
飼い主のそばにいつもべたべたとくっついてる。飼い主も頻繁に犬に声をかけていたりする。 心の支えを求め合う甘えがあり、人離れ・犬離れができない。などの飼い主への高い依存心が誘因・原因です。  

<治療>
T.薬物療法:2〜3ヶ月服用し行動療法を同時に実施します。
U.行動療法:飼い主への高すぎる依存心を軽減します。  


猫エイズ感染症(FIV)

<症状>
猫の免疫不全症候群とも言われる病気で不定期の潜伏期間を経て慢性・難治性の症状を示すことが多いのが特徴です。このウィルスは人・犬には感染しません。  

<原因>
猫免疫不全ウィルスの感染により発症します。咬傷・胎盤感染により感染し、全ての年齢に見られます。日本では外猫の12%に感染しているというデータもあります。  

<治療>
診断キットにより感染していた場合は基本的には対症療法で行います。細菌性の二次感染がよく見られ、抗生物質を使用している間は症状の改善がされるものが多く見られます。最近ではインターフェロンやアジドチミジン(AZT)など色々な治療方法が試みられています。  


白内障

<症状>
白内障とは水晶体が混濁(白濁)した状態をいいます。先天性、若年性、栄養性、老年性、糖尿病性、外傷性、放射線性、併発性などがあります。  

<原因>
原因はまだ不明な事が多いですが、先天性の場合は遺伝・眼の発生・分化時の異常、若年性の場合は遺伝性でプードル、ビーグル、ボストンテリア、コッカースパニエルなどが好発犬種です。老年性は全ての犬種に起こります。  

<治療>
今まで白内障の進行を抑制したり、混濁を減弱させる作用を持つ信頼出来る薬効のあるものはありませんでした。しかしながら近年になり、明らかに白内障の混濁を減少させることが出来る点眼薬が開発され、当院でも使用して好結果を出しています。 白内障初期から使用するとより効果的です。詳しい使用方法などは当院で販売しておりますのでお尋ね下さい。  


歯肉炎(歯石・口臭)

<症状>
歯肉の慢性の炎症で、歯肉の充血と腫脹が特徴で原発性口腔疾患に併発することが多いですが、全身性に啓発する場合もあります。  

<原因>
一般的には歯石の集積と歯槽骨膜炎や齲歯(虫歯)に併発します。また、慢性衰弱(栄養不良、慢性腎炎)や感染症(ジステンパーなど)、ビタミン欠乏症などによっても起こります。  

<治療>
原発性か継発性かを調べて、原因除去(歯石の除去、歯槽骨膜炎、齲歯の治療)、局所療法(洗浄・抗生剤塗布)、全身療法(広域抗生剤の全身投与)などを行います。

近年、1日2回口腔内に噴霧するだけで歯石を溶かすスプレーもあります。これのよい点は、歯石が溶けて綺麗になった後も続けることにより、歯の表面が光沢化するため歯垢が着きづらくなることです。詳しい使用方法などは当院で販売しておりますのでお尋ね下さい。